広島高等裁判所 昭和29年(う)402号 判決
酒税法違反事件については、収税官吏又は税務署長の告発のあることが公訴提起の形式的訴訟条件となつていること、本件は右の告発書の記載によると、被告人は原判示の酒類を無免許で製造したものとなつているにかかわらず、検察官は公判審理の中途において予備的訴因及び罰条の追加で、被告人は右酒類を不法に所持していたものであるとして訴追し、原判決も結局右不法所持の事実を認めてこれが有罪判決をしていることは所論のとおりである。しかし酒税法違反事件において、酒類の無免許製造の事実と、これと日時場所等を同じくする同一目的物件の不法所持の事実とは、その間犯則事実の同一性があると解せられるから原判決が前記の告発及び訴追に基き右不法所持の点につき有罪判決をしたとしても何等所論の如く告発のない事実について公訴を提起し若くは不法に公訴を受理した違法があるということはできない。論旨は理由がない。
(裁判長判事 尾坂貞治 判事 溝口節夫 判事 石見勝四)